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防災体験館 体験レポート

江戸・昭和の津波から街を守った地で、津波防災と共助精神を伝える施設 レポート
稲むらの火の館 津波防災教育センター 訪問'10/2/10


紀伊半島西岸の港町にある「稲むらの火の館」。江戸末期、夜間に襲来した安政南海地震津波で稲むらに火を灯して人々の避難を助け、後に広村堤防を作って約90年後の昭和東南海地震と昭和南海地震津波から地域を守った、郷土の偉人濱口梧陵の精神を元に、2007年に完成した津波防災教育施設です。津波防災だけでなく、災害への自助・共助も楽しくじっくり学べます。

無料で見学可能な濱口梧陵記念館

1 稲むらの火の館 全景 2 入口は濱口梧陵記念館から
稲むらの火の館 全景 濱口梧陵記念館と日本庭園
かなり広い敷地で、背後の津波防災教育センターは、地域の津波避難場所も兼ねています きれいな日本庭園を抜け、旧濱口邸を用いた記念館から入ります、記念館の見学は無料

3 記念館の展示室 4 津波に関する古い資料も
濱口梧陵記念館 展示室内 安政南海地震津波の記録史料
濱口梧陵の生涯と功績を伝える展示、土間を用いたシアターや地域交流施設もあり 江戸時代当時の、安政南海地震と津波の記録など、防災上貴重な史料も所蔵




  

稲むらの火の館 津波防災教育センターの体験コーナー

1 津波防災教育センターへの順路 2 津波防災教育センター内部
記念館内 連絡通路
記念館の展示は、津波防災教育センターに行く前後どちらでも見学できます 1階から3階まで、様々な展示体験コーナーが、館内にはエレベーターもあり

3 3D津波映像シアター 4 迫力の3D映像+音響シアター
3D津波映像シアター 入口 3D津波映像シアター 座席
通常は「大津波の恐怖」、史実を元にした「稲むらの火」もあり、約10分で毎時2回上映 3Dメガネを掛けた立体映像と、座席下のボディソニックで迫力の内容、座席数は50席

5 シアターの後は3階企画展示室へ 6 2階 稲むらの火展示室
3階 企画展示室 2階 稲むらの火展示室
訪問時はスマトラ沖地震津波の展示中、同階に津波避難場所兼災害備蓄倉庫の部屋も 津波防災に取り組んだ濱口梧陵の功績や、安政南海地震当時の資料を展示

7 2階 津波ライブラリー 8 県内各地の3Dハザードマップ
2階 津波ライブラリー 和歌山県内各地の3D津波ハザードマップ
津波災害史や図書のほか、和歌山県内や地元広川町のCG津波ハザードマップがあります 和歌山県内各地の想定震度・津波浸水・避難場所などを、立体地図で確認できます

9 1階 津波シミュレーション 10 県内2箇所の津波を発生実験
1階 津波シミュレーション 津波発生実験
津波の仕組みや対処法解説、津波発生実験や、県内の想定波高を実物大で表示 全長16メートルの水槽で、普段の波と津波の違いも再現。波高以上に遡上する様子も

11 1階 防災体験室 応急コーナー 12 防災体験室 復旧コーナー
1階 防災体験室 応急コーナー 1階 防災体験室 復旧コーナー
防災の基本を、応急・復旧・予防の3本柱で解説、まずは津波体験談と発災時対応から 被災後の安否確認や救護、また被災生活での家庭の自助や地域の共助を学びます

13 防災体験室 予防コーナー 14 締めはINAMURAレンジャー
防災体験室 予防コーナー INAMURAレンジャー
災害に強い家にする家屋対策や、地域の自主防災活動など、犠牲者を防ぐ対策を学びます 各コーナーの締めにあるのが、防災スキルが試されるINAMURAレンジャー

15 濱口梧陵翁からの指令を果たせ 16 防災クイズあり、ゲームあり
濱口梧陵翁からの指令 INAMURAレンジャー クイズ画面
いろんな場面で濱口梧陵翁が出現、指令や励ましが与えられ、時に関西的なツッコミも 応急・復旧・予防の各分野にちなんだクイズや、ゲームで知識と理解を深めます

17 クリアできるとパワーアップ 18 成績はICカードに記録
INAMURAレンジャー パワーアップ ICカード型入館証に記録
各コーナーをクリアする毎に、頼りなげなキャラから、段々パワーアップしてゆきます 各コーナーの成績は、ICカード型入館証を使って記録されます

19 あなたの結果はどう判定? 20 判定結果が認定証に
INAMURAレンジャー 判定コーナー 判定結果プリントアウト
全てのコーナーを回り終えたら判定コーナーへ。判定結果が画面に表示されます 判定結果は画面表示に加えて、希望者には認定証として印刷して持ち帰る事もできます


  
  

交通アクセスと、濱口梧陵が遺した広村堤防

1 JR湯浅駅から徒歩かバスで 2 御坊南海バス広バス停下車
JR湯浅駅 駅舎 御坊南海バス 広バス停
JR湯浅駅から徒歩10分、バスは上下線ともJR線と連絡ダイヤですが1日5本程度 バスだと湯浅駅より5分もせずに最寄り「広」バス停に到着、記念館は下車してすぐ

3 バス停すぐに案内看板あり 4 自動車でもわかりやすい
稲むらの火の館 最寄り交差点 湯浅広港沿いの案内看板
広バス停脇の交差点に案内看板、記念館自体も見えており、入口は50mほど先 湯浅御坊道路広川ICから、国道42号を海方向に直進し左記交差点に到着、間違えても各所に案内看板があります

5 JR湯浅駅から歩くなら 6 海沿いに寄り道すると
県道23号広橋 広村堤防 案内看板
駅から上記最寄り交差点まで、県道23号線を南に徒歩10分、写真は広川に掛かる広橋 広川河口に向け歩くと、広川町役場周辺から、濱口梧陵が造らせた広村堤防が

7 国指定史跡 広村堤防 8 堤防上は遊歩道として整備
広村堤防の堤体 広村堤防天端の遊歩道
安政南海地震を機に1858年(安政5年)にできた堤防は、1938年(昭和13年)に国史跡に 高さ5メートル、長さ600メートルの堤防が、広川町役場前から耐久中学校辺りまで続く

9 感恩碑と説明板 10 防潮扉を挟み堤防は続く
広村堤防 感恩碑 広川町教育委員会による説明板
堤防造営の経緯を伝える碑は1933年(昭和8年)建立、傍らに町教育委員会による説明も 1926年(昭和2年)に設置された「赤門」と呼ばれる防潮扉、現在の物は1980年に改修


  
  

体験した印象

 津波防災教育センターと銘打つだけあって、津波に関してこれだけの内容を常設展示するのは類を見ない施設です。歴史的に見て津波常襲地帯であり、実際に津波被害を受けた地域だからこそ力の入れ様なのでしょう。

 ですが、津波関連の展示以上に、1階の防災体験室の内容がなかなか秀逸です。個人や家庭での防災対策以上に、地域での共助について、これほど具体的かつ的確に提示している防災体験館(防災センター)は、全国的にもなかなか見られません。また、3D映像シアターに出てくる登場人物(親子4人家族と、近所の自主防災会員)が、防災体験室の内容全般に一貫して登場。それぞれの視点での防災のポイントや、自助・共助との関わり方が描かれているため、来館者にとっても教訓的、かつ自分の立場に置き換え防災を具体的にイメージしやすく出来ています。コンテンツの企画・提示方法が良質であり、人材育成を重視した濱口梧陵の精神を反映した内容と言えるでしょう。

 強いて気に掛かった点を挙げるなら、津波シミュレーション水槽。津波の脅威の1つである遡上について訴求が足りず、来館者への理解浸透が不足気味なのではと危惧します。押し寄せる勢いによって、津波は波高以上の標高にまで駆け上がって被害を出す点については、解説映像では言及があるものの、津波発生時や発生後にその点についての強調・再提示に欠けるきらいがあります。シミュレーション水槽は、上記写真でもわかる通り、到達した津波の遡上を見せるため、波打ち際からだいぶ奥まで陸地が製作されているので、そこにも津波が達する事を認識できるよう、発生時の注意喚起に加え、高台への地上構造物の設置や川の追加、リプレイ用カメラの設置・再生などをしてはいかがでしょうか。

 いずれにせよ、これだけの内容を一箇所で体験し学べる施設は国内でも稀なので、余裕があれば半日くらいかけてじっくり堪能して行かれる事をおすすめします。1時間未満でサッと通り抜けるには非常に勿体ない施設です。津波の危険性がない地域の方でも、特に自主防災関係者など共助に携わる方は、ぜひ一度来館してはいかがでしょうか。

  
  

稲むらの火の館 津波防災教育センターの施設情報

 
所在地: 和歌山県有田郡広川町広671
URL: http://www.town.hirogawa.wakayama.jp/
inamuranohi/
TEL: 0737-64-1760
開館時間: 10:00-17:00
入館料: 一般500円、高校生200円、小中学生100円(濱口梧陵記念館のみの見学は無料)
休館日: 月曜・火曜(祝日の場合開館)、年末年始
交通アクセス: JRきのくに線(紀勢本線)湯浅駅より御坊南海バス湯浅線「広」下車すぐ、または駅より徒歩約15分。湯浅御坊道路広川ICより約10分
駐車場: 普通車20台、大型車3台分あり

映像シアター あり 消火体験 土砂災害
119番体験 煙避難体験 火山
地震体験 あり 水害 応急手当
津波 あり 台風体験 耐震補強
ガイドツアー 随時開催(受付へ申し出て下さい)
10名以上の団体は要事前予約