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防災体験館 体験レポート

高い教訓度と震災後の街並で学ぶエンタメ性を持った、防災体験館の西の横綱 レポート
大阪市立阿倍野防災センター 訪問'08/01/29
大阪市立阿倍野防災センター 内部

大阪市の南のターミナル、天王寺から1駅。内容の教育性とエンターテイメント性が、高次元でバランスした関西屈指の防災体験館が、大阪市立阿倍野防災センターです。体験ゾーンの随所に、細部までこだわったリアリティと遊び心が見え隠れする、防災体験館の西の横綱です。

大阪市立阿倍野防災センターの様々な防災体験コーナー

1 あべのフォルサ内にあります 2 阿倍野防災センターは3階に
あべのフォルサ 外観 あべのフォルサ 入口
阿倍野防災センターは、阪堺電車阿倍野駅から徒歩5分ほどの「あべのフォルサ」にあり あべのフォルサには、市立屋内プールや市の災害備蓄倉庫も併設されています

3 防災センター 入口 4 体験ツアー申込は受付で
阿倍野防災センター 入口 阿倍野防災センター 受付
防災センター入口には、手荷物用のコインロッカー(100円硬貨・返金式)が多数あります 体験ツアーへの申込は受付へ、コースは3体験30分から8体験100分までの4種類




  

自由見学・体験が可能な「防災学習ゾーン」

1 マルチメディア学習コーナー 2 震度7地震体験コーナー
マルチメディア学習コーナー 震度7地震体験コーナー
地震や風水害、防災知識や対処法などを画面で学べます、休憩・待ち合わせ場所にも 兵庫県南部地震や想定南海地震など、8種類の地震の揺れを3次元で再現できます

3 まずは阪神淡路大震災から体験 4 次いで想定南海地震を体験
3次元地震体験 阪神淡路大震災波形 3次元地震体験 想定南海地震波形
まずは兵庫県南部地震を体験、画面の地震波形に合わせながら3次元的に揺れます 直下型の阪神淡路と海溝型の南海地震、揺れの違いが改めてよくわかります

5 防災用品の展示解説コーナー 6 防災グッズ売店もあります
防災用品の展示コーナー 防災用品売店
非常持出品が中心で、命を守るために肝心の、インテリア対策用品が1つだけで残念 売店では各種の防災用品が買えます、帰りに気になるグッズを買っても良いでしょう


  
  

体験ガイドツアー「地震災害体験ゾーン」のみで体験できる内容

1 多目的防災学習ルーム 2 リストバンドをもらってツアー開始
多目的防災学習ルーム リストバンドをもらってツアー開始
体験ツアー参加時のガイダンスホール、また様々な防災イベントで使われます 体験ツアー開始、各コーナーで渡されたバンドをパネルにタッチして成績を記録します

3 バーチャル地震体験コーナー 4 火災発生防止コーナー
バーチャル地震体験コーナー 上映内容は見てのお楽しみ キッチンを模した火災発生防止コーナー
体験ツアーの始まりは、自宅でテレビを見ている場面から、前2列に座るのがオススメ 特に火事を出さないための地震後対応を教わり、煙避難(煙中)体験コーナーへ続きます

5 初期消火コーナー 6 カウンター越しに水消火器を放射
初期消火コーナー 指導者デモ 初期消火コーナー 体験風景
煙中コーナーを抜けると初期消火体験コーナー、消火器の使い方を教わります 水消火器は常時ホースと繋がり水圧低め。カウンター越しに画面の火を消す射的調です

7 119番通報コーナー 8 ガイドが付いてポイント解説
119番通報コーナー 端末 119番通報コーナー 解説風景
自宅で被災し、火災を消し止め外へ出た場面、公衆電話から119番通報する想定で体験 ツアー毎に、ガイドが誘導とポイント解説、続いて体験を行い、各コーナーを巡ります

9 震災後の再現街並が体験コーナー 10 救出体験コーナー「親切商店」
地震災害体験ゾーン 震災後の街並セット 消火コーナー 救出体験コーナー「親切商店」
震災後をリアルに再現した、圧巻の街並に体験コーナーが、建物随所のコネタも笑えます 崩れかけの商店を模した建物では、ジャッキなどを使った救助方法を実際に体験できます

11 応急救護コーナー「宮間医院」 12 修了証発行コーナー
応急救護コーナー「宮間医院」 修了証発行コーナー
病院を模した建物で、止血や骨折手当など共助にも役立つ応急処置を体験できます 体験が終了したら、体験ゾーンを一望する展望フロアで。体験ツアーの修了証を発行

13 バンドをタッチし修了証発行 14 修了証は紙のほかにネットでも
リストバンドを機械にタッチし修了証発行 体験ツアー 修了証
修了証には、体験コーナーの成績・解説の他に、自分用のID番号が書かれています 修了証発行時のパスワードと記載IDを元に、公式サイトでも成績などを見られます

15 自分の対応をリプレイ映像で確認 16 煙中コーナーの様子も
リプレイ画像 初期消火コーナー リプレイ画像 煙中コーナー
修了証発行時に、体験の様子がリプレイ映像で流れます、自分の対応はいかに? 自分の対応を客観視すると意外な発見も、なおリプレイ映像は確認後に消去されます


  
  

体験した印象

 本施設は、間違いなく西日本屈指の防災体験館だと言えます。特に、自宅で被災し被災後対応・避難をする自助の後、外に出てから救出・救護・消火活動などの共助に移る、大規模地震後の一連の行動を、体験コーナーとしてスムーズに繋げたコンセプトが秀逸です。消防・警察・自衛隊などの公助が最善を尽くしても追い付かず、隣近所の共助で多くの人を助け出した阪神淡路大震災を経験しただけに、全国に先駆け、自助から共助までの市民防災全般を体験コースとして実現した事は、本施設が防災体験館の西の横綱たる所以でしょう。

 加えて、当館目玉の地震災害体験ゾーンに再現された大地震後の街並も、インパクト絶大です。公共施設の域を打ち破り、有料の民間アミューズメントパークに匹敵するレベルと言えます。東日本の防災体験館は、真面目に防災教育に取り組むあまり、より多くの人に親しんでもらう「普及啓発」の視点に欠け、防災関係者以外にも来訪してもらうには、堅苦しく敷居の高い傾向にあります。一部に、税金の無駄遣いと揶揄する声もありますが、高い教訓度と、楽しく体験でき・行ってみたいと思わせるエンターテイメント性を、高次元で両立した点も、西の横綱たるもう一つの所以と思います。

 体験コースは4種類あり、3体験のみの30分コースから、全8体験の100分コースまで多彩です。また本格的な、地域防災・自衛消防組織向けの可搬消火ポンプ体験といった、全国的にも珍しい体験コーナーもあります。市民によるジャッキ救助体験コーナーも、まだ全国では少なく先進的です。更に、震度7地震体験コーナーが別途存在し、体験ツアーに参加できなくても、随時地震体験ができる敷居の低さは普及啓発上大事なスタンスです。

 これほどの施設でありながら、少々残念なのは、淀川と大阪湾に面した水都大阪でありながら、風水害に関する体験はおろか展示すら一切ない事。さすがに現施設内ではスペース的にも無理があり、他階まで施設拡張しない限り実現不可能と思われるので、阿波座の大阪府立津波・高潮ステーション等に行ってみましょう。

 余談ながら、再現建物は内外問わず、細部まで芸の細かい造りで一見の価値ありです。特に、レトロマニアな方にはかなりウケる内容でしょう。随所にマニアックなまでの遊び心が見え隠れし、公共施設と思えぬ「キレた」造りは、やはり大阪という地の為せる業でしょうか。こうした点を含め、多方面から「税金の無駄遣い」と揶揄される事の多いこの施設ですが、この様な施設は、民業での営業利益が困難なので、悩ましいながらも公営に落ち着くのでしょう。いずれにしても、普及促進のためには「楽しく防災」が必要だと、訪問する度実感させる、そんな防災体験館です。

  
  

大阪市立阿倍野防災センターの施設情報

 
所在地: 大阪市阿倍野区阿倍野筋3-13-23 あべのフォルサ3F
URL: http://www.abeno-bosai-c.city.osaka.jp/
TEL: 06-6643-1031
開館時間: 10:00-18:00
入館料: 無料
休館日: 水曜・毎月最終木曜・年末年始
交通アクセス: 地下鉄谷町線・阪堺線阿倍野駅より300m、JR・地下鉄御堂筋線天王寺駅、近鉄電車大阪あべの橋駅より600m
駐車場: 24台(市立プールなど、あべのフォルサ他施設と共用)

映像シアター あり 消火体験 あり 土砂災害
119番体験 あり 煙避難体験 あり 火山
地震体験 あり 水害 応急手当 あり
津波 台風体験 耐震補強
ガイドツアー 随時開催(体験コース4種類、受付へ申し出て下さい)
Aコース:8体験 100分、Bコース:6体験 80分、Cコース:5体験 60分
Dコース:3体験 30分、各コース詳細は公式サイトまで
平日でも混雑あり、コース・時間希望の場合、個人でも予約した方が無難